「CP#11」 




八神の住むアパートメントへと向かう車の中。

フロントガラスの雨を拭うワイパーの音を聞くとはなしに聞く俺の胸の内には、再び不安や怖れといった負の感情

がじわじわと広がって、かすかな息苦しささえ感じていた。

何があったかなど到底話すことなどできないと思う一方、でもなにか話さなきゃ…と内心、急かされるように思う。

それなのにそう思えば思うほど、口の中は乾いて言葉がでてきてくれなくて。

結局、ナビシートで身を堅くしたまま、手元や闇ばかりの外の景色に顔を向けて黙りこんでいた。

すると沈黙が充満した車内に突然、陽気で早口気味なDJの喋りと南国の空気を感じさせるような音楽が流れだし−。

「……」

八神にしては珍しい番組選択だなと思って、そっと横顔を伺ったら気配に気づいたらしい。

「静かなままのほうがいいか」と前方から目を離さぬまま、ボリュームボタンにふたたび手を伸ばそうとする。

「いいんだ。これ、つけといてくれよ。こういう音楽も好きだしさ」

そう言って、俺はその手を掴んでとめた。 今は静寂より、こうしたにぎやかな音があったほうが助かる。

「それならいいが…。べつに消しても他のにしても、おまえの好きにしてかまわんぞ」

八神は手を引いて、また運転に専念する。

俺はまた窓の外に顔を向けて黙り込む。 と、ほどなくして八神に「京」と呼ばれた。

「うん? うわっ…なんだっ?!?!」

ふたたび八神に顔を向けた途端、頭に八神の右手がポンとのっかり、緩く鷲掴まれたまま揺さぶられて驚いた。

「な、なんだよ。八神?!」

「おまえが余計なことを考え過ぎてるような気がしたんでな。これで少しぐらい振り落とせたらいいなと思った」

あいかわらず八神の視線は前に向けられている。なのにアガットの色が美しい八神の双眼に射抜かれたような

錯覚にドキリとした。

「考えるなって言われても…」

「無理だろうな。ならオレはオレで次の手を考えておく」

「……」

いつもとさして変わらぬポーカーフェイスの下に見え隠れする暖かさ。それを知るたび、俺の中では八神を

愛しいと思う気持ちがまぎれもないものとなっていくのがわかる。と同時に、まるでその思いを阻むように、

脳裏にはあの夜が甦った。

血まみれの光景と、蒼司さんの言葉ともうひとつの姿。

― 京。一族以外の人間と愛し合うことはできないよ。君もまたキャットピープルの性を持っているのだからね。

同族でもない人間と愛し合えば、わたしと同じ道を辿ることになる。八神を彼女のような姿にしたくはないだろう?」 

「……っ…!」

思い浮かんだ血塗れの光景を断ち切るように瞼を堅く閉じ、胸あたりのシャツを握り締めた。たとえ呪いが我が身

を、精神を蝕むようなことになっても、八神をあんな惨い運命に落とすようなことはしない ――。

俺は自分の中に息づきはじめたかもしれない何かに挑むように、八神に引かれるまま、彼と町に戻った。








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 = アトガキ = 
アダルトにゃんこ版「CP」は八神をちょっと魔性の男(笑)っぽくしてみたかったんざんすが、書いていくと
ちーっともそういう路線にいってくれないなぁ。うーん。
もう私の中で八神庵=いい人 イメージが固定されているのだろうか。
ではすこし路線を変更して…。優しいコワモテ兄さん(庵サン)は好きですか?