それはまだ京が幼かった頃のこと。 


 いつものことながら就寝時間が過ぎてもいっこうに眠ろうとしない京に、ゲーニッツは

とっておきの寝物語と言ってはよく、いにしえの神の話を語って聞かせた。



なかでも京がいちばん興味を引いたのは、勇猛で智に長けながらもその大きな

黒翼と紅蓮の髪が凶々しいと天から遠ざけられてしまった、孤独な黒翼神の話。


そんな黒翼神は辿り着いた「天の果て」で、心ならずも犯してしまった罪の報いに

よって片翼をもがれ、その深く抉れた疵には永劫の呪いがかけられたという。






―そのあと、黒翼の神さまはどうなったの?



―彼なりの罪滅ぼしなのか、正気を取り戻した黒翼の神はそのまま呪詛が

込められた疵を癒そうともしないまま地に降りて永い時を一人さすらい続け、

時に何処(いずこ)かの教会に姿を見せては祈りを捧げていくとか




―可哀相だね。その神さま



―可哀相? あなたと同じ天使を大勢殺めたのに?



―そうだけど…。それは…ひとりぼっちにしたから……



―どうして泣くの?



―わかんない。でもその神さまのコト考えると涙が止まらないんだ



多くの天使を殺めて罰を受けているということに対して多少の恐怖を感じ

なかったわけではない。けれど、その反面なぜか惹かれた。

その頃から京は、永遠にその身を蝕まれながら生きる、ひとりぼっちの

神にいつか巡り会えることを心待ちにするようになっていた。



『 ここに来て。僕が癒してあげるから 』



やがて月日は流れて。



そしてやっと、京は聖堂で跪く彼に出会って、ひと目で"恋"をするのだが――。




今回はそこからちょっと溯る、ある年のクリスマスのお話―。





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