「In the world only for 2」(サイトTOP用小話 夏バージョン)




夏空の下。

熱と潮の香りをはらんだ海風にあおられる髪をかきあげるような仕種で軽くおさえながら、八神は後ろを振り返った。

タンデムしてきたバイクを停めた堤防は、陽炎の向こう、もう遥か後方にある。

視線をもとに戻し、前方を歩く京に「どこまで歩く気だ?」と声をかけてみた。すると

予想はしていたが、京はわずかに顔を背後に傾けて「もうちょっと行こうぜ」と言う。その間も軽快な歩みは止まらない。

どうやら裸足になって海水に足を浸した途端、京は童心にかえって(?)しまったらしい。

容赦なく肌を焼く日差しをものともせず、楽しそうに水飛沫をたてながら、大股でずんずん歩いて行く。

そんな京の斜め後ろ。波打ち際ギリギリのところを、八神は真顔のまま、つかず離れずといった様子でついていく。

しかし、この暑さだ。暇につきあうにも限度というものがある。

八神はそろそろ、京の腕をどのあたりで掴まえようかと思いはじめていた。と、そこへ、

急に立ち止まった京が振り向き、八神に向かって右腕をさしだしてきて―。

ワケがわからず「なんだ?」と問うと、「手、つないで歩いてみないか?」ときた。

「!」

思いもよらぬ申し出に八神が言葉に詰まっていると、「いいじゃん。デートなんだから」と屈託のない、少年の顔で笑う。

「・・・・・・」

もっとも気温の高まる時間帯のせいか、あたりに人影は見あたらない。

(・・・もう少しぐらい、つきあってやってもいいか)

フッと表情をゆるめて京同様に靴を脱いだ八神は、さしのべられたままの手を取ってまた歩き出す。


二人きりの海辺。肩寄り添いあわせ、もうすこし―。



夏向けにサイトトップにUPしていた小話。



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