「 スィート ナイトメア 」
 



ウィークエンド。


京が"数日分の食材の買い出しに付き合え"という不遜な態度の庵におとなしく付き合ったのは、

ここ連日庵の部屋に入り浸って食事やらなんやらの世話になりっぱなしだったコトにちょっとだけ

感謝の意を示そうと思ったからだ。…とか言いつつ本日も食事を奢られての帰宅だったりする―。



京が買い物袋を両手に庵の後に続いてキッチンに入るとリビングで電話が鳴った。

「京、買ってきたものを冷蔵庫に入れておいてくれ」

「へいへい」

庵がリビングに消えると、京は冷蔵庫を開けてしゃがみ込み、袋からランダムに品物を取り出し

てはガラ空きの冷蔵室に入れていく。

 ビール・ステーキ肉・卵・チーズ・レタス・トマト・オレンジ、鰆の粕漬け・鯵のひらき…

 「魚…? めずらしいじゃん。あいつも魚のウマさがわかってきたのかな」

ビールを取ってきてくれと頼まれて傍を離れた間にカゴに入れたのだろう。袋の中をガサゴソして

みるとツナ缶なんかも入っている。

「……オレの分? …ンなワケないよなぁ〜〜?」 

リビングにチラっと目をやった。まだ電話中らしい。内容まではわからないが、

時折庵の声が聞こえてくる。

それから15分ほど経過して…。

やることも済んで、かといって満腹状態にある今はつまみ食いをする気も起こらない。すっかりヒマ

になってしまった京は庵の様子を窺おうと、そーっと壁に張りつくような体勢でリビングへと足を

忍ばせるが、入り口に近づいたところで電話を切って出てきた庵に出くわした。カッコ悪いところを

見られて思わずとりつくろうような愛想笑いを浮かべてみる。

「なんだ、終わっちまったのか」

「ああ。待たせたな。ところで冷蔵庫に入れるものはわかったか?」

「ああん? ナニソレ? おまえ、さりげなくオレをコバカにしてませんかい?」

「ん? そんなことはないぞ」

京に上目づかいに睨まれると庵はどこか不機嫌そうだった表情をすぐに掻き消し、

唇の片端を吊り上げて目を細めた。

その表情に京の脳裏にチカッと警告灯が灯る。

ヤバイぞ、と。

「……あ、俺そろそろ帰るわ。じ、じゃッ、庵またな!」

「待て。京」

「わーーーーッ!!」

庵をこれ以上刺激しないようにと、京はつとめて平静を装って玄関へ向かうが、

庵に背を向けた途端、羽交い締めにされてしまった。

「せっかくの休みを買い物につきあってくれた礼をさせろ」

ゆっくりと、だがしかし確実に寝室に引きずられていく。

「ニホンゴは正しく使えっつーの! …じゃなくて急にサカるなッッ!! 帰らせてくれ〜〜!!!」

「いいコにしないとお仕置きだ。どの道オレから逃げられるとは思ってないだろう?」

庵は自分から逃れようとジタバタと暴れる京を物ともせず耳を甘噛みして、低く思わせぶりに囁く。

「…………」

お仕置き―。この脅し文句が効いたのか、抵抗がパタリと止んだので腕を解いてやると観念したのか

京がクルリと向き直った。庵は満足げにうっすらと赤みがさしているその頬に両手を添える。

「この間の<お仕置き>がきいたか?」

「うッ、うるさい!」

「そう拗ねるな。またいじめたくなるだろうが」

ますます赤くなって俯いていく京の顔を上げさせて庵は啄ばむようなキスをした。

 

ベッドが小さい軋みをたてる度に京が艶のある吐息をつく。庵は仰向けに横たわった自分を跨ぐように

乗せた京の腰を捕らえ容赦なく突き上げながら、軽く喉を反らせてクセのない黒髪を揺らす京の様を

下からジッと見上げて、京が達しようとする寸でのところで動きを止めた。

「んっ…なんだ…よッ……」

「まだまだ楽しみたいのでな。もう涙が零れそうだぞ、京」

「この…・ッ、サド…・!」

潤んだ目に睨まれた庵が京をそのままに少し身を起こす。すると

「……ふっ・・アアッ!!」

京を穿ったままの庵自身が微妙に角度をかえて京に甘い声を上げさせた。

 庵がニヤリと笑う。

「またおまえのイイところをみつけた」

「いきなりの上に…まだヤるつも……りかよ?!」

「もちろんだ。しばらく留守することになったのでな。おまえが夜泣きしないように

たっぷりとオレを残していってやろう」

そう言って庵は京の双丘を撫でた。この発言に京が赤面したのは怒りからか恥じらいからか。

「…なっ!? 勝手にどこにでも行ってこい!! おまえの女でもあるまいし…ハ・・アアッ」

庵自身を深く受け入れて張り詰めたその際(きわ)を指先で辿られると、京が背中をしならせて

短い悲鳴をあげる。そして庵はガクリと力を失って自分の胸に両手をつき、熱をもった襞を

撫でられる感覚に耐えようと身を震わせる京の顔を引き寄せ、瞼に口づけると

「だが<オンナ>、だろう?」

耳朶をなぶりながら囁く。

「…ハッ…う…やめ……」

もう一度ソコに指を這わせて庵の雄を呑み込んで離さない事実を京に知らしめる。時間を掛けて―。

「いおり……」

ふと。

京が溜め息をつくように庵の名を呼ぶ。

キスを求める合図。

そんな京に、意地の悪いイタズラをしかけたりしていたさっきとはうってかわって庵はすぐにキスで応える。

深いキスを交わしながら庵が動きを再開させると、京が途切れとぎれにナニゴトか呟く。

庵はそれに耳をそばだてた。

「中で…」

「?」

「中で…ださない…で…」

庵は京が何のことを言わんとしているのか悟ったが、取り合うつもりはない。

「なんだ。子供でもできそうで心配か? 両家にとっては史上空前の大スキャンダルだな」

揶揄をたっぷり含んで庵が喉の奥で笑う。

「バーカ。さすがのオレさまにもニンシンは不可能だっちゅーの! 今夜は泊まってく気がないから…ア…ンンッ」

「八神の精を侮るなよ。京」

「…………!」

京の両足を限界まで割り開いて体をさらに深く進める。



かくして京はまたしてもさんざんに抱かれてしまうこととなった。



―シバラク会エナイ・・・・・・・・ 

そんな言葉を聞かされたせいなのか、今夜はカラダの奥深くに感じる庵の熱が甘く切なくていつまでも離せない。

こんなにも庵が欲しいと思う自分にプライドの文字がチラつくが、一夜の甘やかな悪夢を見たのだと思って

今は溺れてしまえばいい―…そう言い訳して、京は庵の愛撫に応えるのだった。  




■ fin ■


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ダーリンが買ったお魚は京のゴハン用ってコトで、よろしく。