『眠れぬヨルはあなたと・・・』




 オロチの消失後―。
 
 からくも生き延びた草薙京と八神庵は現在、肉体のダメージはいうまでもなく、精神的な面も

 考慮されて入院加療中である。

 生存が分からなくなっていた2人を現場から数キロ離れた場所で捜索チームが発見した時、

 京も庵もお互いの体を強く抱きしめあっていて、手当てのため引き離すのに難儀したときく。

 (このコトについて後日、「おまえ達仲悪いんじゃなかったのか?」と、京は紅丸達にさんざん

 冷やかされるハメになった)





 消灯され静まり返った病棟。

 その晩、いち早く意識を取り戻し、自力で動きまわれるまでにメキメキと回復していた京は、

 ベッドを抜け出してグリーンの非常灯だけが点る人気のない廊下を歩いていた。

 普段ならとうに熟睡している時間帯なのだが寝つけないのだ。日中、惰眠をむさぼり過ぎた

 報いかもしれない。そう思う一方で、でももしかしたら今夜の月がやけに輝いているせい

 なんじゃないかな、とも思う京である。

 こんな月が明るすぎる静かな夜は、なんだかウズウズして眠れない。

 月がアイツを思い起こさせるから…。



 向かう先は庵の病室。

 「八神庵」のプレートがかかっている病室に辿り着くと、そーっとドアのノブを回して室内に

 忍び入った。ところが。

 ベッドに備え付けの照明がついていてうっすらと明るい病室では、ベッドに横たわったままの

 庵が顔をドアのほうに向けて京を睨んでいた。来ることを予期していたように。

 「……なんで起きてんだよ、テメーは?」

 「…俺の勝手だ。キサマこそ何の用だ?」

 低い声音で交わされる会話。

 言葉に愛想もへったくれもない2人だが、そこには心底いがみあっているというような険悪な

 雰囲気はない。

 「なーんだ。思ったよりピンピンしてんじゃん。月が明るすぎて眠れねーから、

 腹いせにテメーの寝顔にイタズラ書きでもしてヒマつぶししようと思ったのによ」

 「……わざわざそれだけの為に痛む体をひきずってきたというのか? フン。素直じゃないな」

 暗がりに、腕や足に巻かれた包帯の白さを浮かび上がらせている京の姿に庵がひっそりと笑んだ。

 「ああ〜?」

 「心配だったんだろう?」

 「 なっ! ……俺がなんで庵の心配をしなきゃいけねーんだよ?」

 少しばかり声のトーンが上がりかけた京に向かって、庵が唇の前にひとさし指をたてて
 
 「黙れ」という仕種をした。

 「看護婦が来るぞ」

 「げッ! マジ?……」

 たしかに。隣の病室のドアが開いて人の気配がする。

 「やべっ!」

 室内を見渡すが身を潜められそうなスペースがない。ワタワタしていると庵が顎をしゃくって言った。

 「ベッドに入ってろ」

 迷うより先に体が動いていた。京がベッドに潜り込み、その膨らみを隠すように庵が小さく
 
 うめきながらも片膝をたてて体を起こした。

 そして時を同じくしてドアが開く。巡回の看護婦が懐中電灯片手に立っていた。  

 「あら。八神さん、どこか痛むんですか?」

 「…べつに。今なんとなく目が覚めただけだ」

 「そう。ならいいんですけど…なにか少しでも異常を感じたらブザーを押してくださいね」

 それだけ言うと看護婦はドアを閉めて次の病室へと歩み去った。

 ―静寂。

 「……おい」

 庵の声に促されて京が掛け布団から顔をだしたが、

 「イテテテ…」

 慌てていきなり動いたのが悪かったようでまた傷が疼き出したらしい。しかめている顔を、

 しばし呆れたように眺め下ろしていた庵だが、少し声をやわらげて京に言った。

 「ウロチョロしてないでおとなしく寝てろ。オレはオレのまま、この通り生き長らえているだろう?」

 庵はそう言うと、無造作に京の手を掴んで自分の首筋に当てさせた。

 肌を通して伝わる脈動。生の証。

 「安心したか?」

 「………」

 どうもこの男には相手が、できれば気どられたくないと思っている本心をくみ取って

 しまう、ちょっと時にオモシロクない本能があるようだ。

 手はそのままに、じっと庵を見上げていた京が、詰めていた息をそっと吐き出して言った。

 「…はいはい。しましたよ。またテメーに付け狙われる日々が始まるのかと思っ

 たら生活にハリがでてくるってモンだぜ。ああ、生きてるってスバラシイね!」

 もう、ヤケである。

 「それはよかった」 

 「テメーにとってもな」

 「ああ。体がもっと自由に動けばもっと違うカタチで実感させてたりたいところだ」

  喉の奥で満足そうに笑う庵がそろりと顔を寄せると、京も少し体を起こす。

  力強い笑みを湛えて。

 「受けてたつぜ。だから早く治せよ……テメーじゃなきゃ、燃えねぇ」

 

 秘密の逢瀬―。

 引き合うように唇を重ね、重ねるごとに互いに夢中になる2人を、月だけが見ていた。




 この数十分後。ナースステーションでは京がいないと当直看護婦の間でひと騒ぎ起こり、

 翌朝病室に戻った京は婦長から叱られることとなる。





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★衝動的に、いまさらな「’97」その後ネタ。
 
 やっぱりあのED後、庵と京は一緒に倒れてるトコロを助けられ、神楽一族
 が運営する病院に収容。
 そして病院側が火災を恐れて(笑)病室を離し、互いが顔を合わさぬように
 隔離状態にしていたのだが、2人はやがて互いの気をうすうす感じはじめ、
 (血が呼び合う仲だしぃ♪)…みたいな展開になったら嬉しかったのに。
 いまさら的妄想といわれようと(笑)。
 ・・・なんかただの仲良しサンなおハナシね。イヤンバカン!
 
 キスで互いを確かめ合ったアトの会話。↓

「病室に戻る気がないならこのまま抱くぞ」
「まーだそんなコトができる体じゃないのわかってんだぜ。ムリムリ」
「当然俺は動けんからおまえが上だ」
「・・・・・・・それって」

        ・・・な―んて、庵、お殿様状態なんだよ。うぷぷっ★
      
 
 同人誌見ててもドラマCD聴いててもやはりオロチがらみなネタが一番好きー☆
                          (2000.5.26.UP)