『 KYO'S Birthday 』
冷たさもひとしおの冬の夜。
設定した覚えもないのに、突然リビングボードの上に置いてあった携帯電話のアラーム音
が鳴り響いた。
傍のソファーで浅い眠りにあった八神は、その耳障りな音に眉をひそめつつも手に取って、
アラーム音を止める。
なぜ鳴ったのか? と、ぼんやりと画面を眺めて…。
画面に表示されていたメッセージによって、八神は一瞬にして覚醒した。
携帯画面には、こうあったのだ。
『今日、12日は俺、草薙京サンの誕生日だぜ。祝え。T公園で待ってるぞ』
日付けが変わった。
またひとつ、年を重ねた。
ただそれだけのことだ。
誕生日とはいってもいつも通りに過ごすし、生き方や考え方はあいからわずだし、おまけ
にすこぶるタフさで
俺の人生に絡んでくる八神もいるしで…。
………………。
「…いや、待てよ? なんにも変わりゃしないってのは、違うか…」
呟いた直後。
待ち人の気配を感じて、京はダークブラウンのレザーブルソンのポケットに突っ込んでいた
両手をそろりとだして
立ち上がった。
そしてその姿をたしかに視界に捉えると、仁王立ちして迎える。
「よ! 携帯にもあった通り、今日は俺の誕生日なんだ。プレゼントのひとつでも用意してきてくれたかな?」
「無茶言うな。それに、おまえにはこれだけで十分だ」
意外に機嫌のよさげな八神が京に向かって右の手のひらを流れるような動きで差し出すと、青紫の炎がゆらりと
たちのぼる。
「やっぱりそうきたか」
京が不屈な笑いに、口の端を少し吊り上げた。
「それと…」
八神も京とよく似た笑みを口元に浮かべて、手のひらで揺らめかせていた炎を一度沈めると、つかつかと京に
近寄ってブルゾンの襟を掴み、乱暴に引き寄せる。
「!」
かまえる余裕すらない速さで、京は八神に唇を奪われた。
「あ」という間に巧みに舌を吸われて、なお深くなる口づけに思わず慌てると、ようやく顔が離れた。でも襟はまだ
掴まれたまま、ついでに腰も抱き寄せられたままの体勢なので、反撃ができない。
「…ソッコーかよ」
京が唇をぬぐいながら軽く睨むと、八神は京を煽る様な目で見下ろす。
「先手は俺の勝ち、だな」
「う…それだけで勝ち誇った顔すんな。俺はまだ…」
「じゃぁ、続きはオレの部屋で?」
挑発するように、ぐぐぐと顔が寄せられてくる。
「〜〜〜〜!」
「ん?」
「………ぉ、おう…」
「よし。オレの携帯を勝手に弄って、おねだりしたぐらいだ。起こされた以上、オレなりのやり方で
たっぷり祝ってやるぞ。おまえもどんな一手を見せてくれるのか、楽しみなことだ。なぁ、京?」
上品な光沢を放ち、かつ上質さを感じさせる柔らかさのある黒いトレンチコートの裾を翻して先を歩き出した八神
の後姿は、魔王とも呼びたくなる風格で――。
負けを認めるつもりはないが、……勝てないかも、と内心思ったりなんかした京だった。
「でも祝ってくれるって…言ったもんな」
年を重ねる間に愛もまた…。
そう思うとくすぐったくて、思わず笑みがこみ上げてくる京でもあった。
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このSSは、12月12日、時間の流れを失念していたウッカリさんな管理人が、
京の誕生日祝いとして、
誕生日当日とにもかくにも勢いで、突っ走り書きしたものです。
(2006.12.12)
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