「パイレーツ編」





イグネスは近隣の港町の中で最も大きく栄えている港町だ。

近海を行き来する様々な商船が必ず寄港することもあって、物資も食料も豊富

であるし、大きな歓楽街まで有しているとなれば、人生の大半を海上で送る者

達にとってここは極楽天国。ゆえに海賊を生業とする者の中にもここを好んで

訪れる者が多いのは当然ともいえる。

海上の荒くれ者ども。賞金首。彼らはイグネスでは略奪や殺しはやらない。

そのかわりこの島に住む者達も海軍に密告などせずに、滞在中は島の客人とし

て接するという、いつの頃からかそんな暗黙のルールができていた。

そして今宵もまた、月が雲間に隠れはじめたのを見計らったように、ある海賊

船がイグネスを訪れた。



灯りを持たずに港町へ続く小道を進む三人の人影は、夜目が利くのか、はたま

たこの地を歩き慣れているのか、足先をさして迷わすこともなく、呑気に言葉

を交し合っている。

「それじゃー、まずはあそこだな。紅丸、真吾、まずはキングの店で一杯やっ

ていこうぜ。目新しい情報も欲しいしな。で、そのあとは自由解散。明朝の出

航時間までに各自戻るということで」

「それはいいですけど…。お頭、目立つ行動はくれぐれも慎んでくださいよ? 

ゼロ大佐との件、まだほとぼりさめちゃいないんですから」

「わかってるって。それより真吾、店や往来では俺のこと、<お頭>なんて呼ぶ

なよ。キング達はともかく、それこそどこで海軍筋の人間が聞いてるかわから

ないからな」

「あっ、そうでした。す、すいません。気をつけます」

「おう」

「キミ達、ドジ踏んで何かあっても、紅丸おにーさんは他人のフリするから。

自分のことは自分で何とかしなさいね。戻ってこなかったらあの船、おれがも

らうから」

「そんなぁ…紅丸さん、それはあまりにも冷たいお言葉じゃないですか」

トホホな顔で紅丸の顔を見上げる真吾は、去年、最低凶悪な海賊に襲われた港

町で京が気まぐれに助けた少年だった。京の強さに惚れたと、身寄りのない少

年は、京や紅丸の忠告も聞かず京達の海賊船に乗り込んで、今日まで海賊志願

者、というよりは使い走りさせられている(そうした扱いなのは、真吾に血なま

ぐさい世界に踏みこまさせない為にという京達なりの、ひそかな思いやりなのだが)。

「ホントに態度のデカい航海士兼副頭目だよ。こいつが頭目になった日にゃ、

あの船は美女ばっかりのハーレムに変えられちまう」

京はやれやれといった顔で星空を仰いでため息をひとつ。

「当然だ。おれの船にむさくるしいヤロウ共はいらん」

情け容赦のないことをサラリと言い放つ紅丸だが、その容姿は端麗で、あちこ

ちの港町には彼の虜になった可愛い娘達がいるらしい。

と、そんな本気とも冗談ともつかぬ会話をしながら、三人はお目当ての酒場に

到着した。




―海賊「サラマンダー」の頭領・京は、そこで運命の男に出会う。



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はっはっは。庵がまだでてないんですが…。

このあと、島のルールを破って酒場でトラブル、そして乱闘。すると店内の片隅からゆらりと
白の海軍服姿の庵が登場。
庵の視線、言葉にいつになく熱くなる京。それは恋の予感(←お約束ですよ!)
…といった感じで、バトルとロマンスが繰り広げられたと思ってくださいまし。


                   
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