日も沈み、真昼の暑さが幾分和らいだ縁側。

腕を枕にして、京は手入れの行き届いた我が家の廊下に寝そべる。

普段なら行儀が悪いと窘められるところだが、今日この家にいるのは

京と庵の2人だけ。 

風呂上りの肌はさらりとしていて、あたる風が心地よい。

頭上で風鈴が、チリンと涼しげに鳴った。

愛嬌のある顔をした、赤くて尾ひれの長い金魚が2匹描かれている。

昨日、三つ隣の町で催された夏祭り会場の夜店で、「買ってくれよ」と

京がせがみ、けっこうあっさりと庵が買ったもの。

「あいつ、ずいぶん可愛いやつ選んだよな。意外とこういう絵柄が好みとか?」

京がそれをぼんやりと見上げながらへらっと笑う。すると

「フン。おまえの趣味にあわせただけだ」

客間からのそりと姿を現した庵がこにくたらしく答えて、隣に腰を下ろした。

京同様、湯水を浴びてきたらしい庵も、やはり気持ちよさそうに見える。

「言ってろってんだ。ま、音もいいし、この絵柄だって悪くはないからな。サンキュ、庵」

「せいぜい大事にしろよ」

「へいへい。ありがとうございます嬉しゅうございます、八神様」

 

お互い悪戯ッ子のような笑みを含ませてのやり取り。

それはそれはゆったり穏やかに流れる、夏のある日の夕暮れ。







「なぁ庵。さっき冷蔵庫見たら、枝豆はあったけどビールが切れてたんだ」

「……それで?」

「ちょっとそこのコンビニまでお使いに行ってくんねーかなぁと」

「どこだか知らん。おまえもこい」

「門出て、左にまっすぐ駅方向。右手。所要時間は片道徒歩10分程度」

「………」

無言のままジロリと自分を見る庵の視線。

京はつい、駄々ッ子口調になる。

「だって俺、さっきおまえと手合わせした時に1回だけ受身とり損ねてさー。

まだ腰が痛いんだもんよ」

「情けない」

「今は何とでも言いやがれ。だからさ、おまえ行って…って、もしもし?」

目を閉じて居直りかけていた京がぎょっと目を開けて庵を見た。

庵が覆い被さるように京の上に身を屈め、コットンシャツにするりと

手を忍び込ませて、かすかながらも鈍痛を訴えている腰を探りだしたからだ。

「どのあたりだ? 診てやる」

「いや、いいって! それに…おい、そこは腰じゃないだろうが! アイテテッ」

「恥かしがることはないだろう?」

「恥かしーだろが…ッ!! どこまで診るつもりだ!」

「おとなしくしてろ。大声だしてたら隣人が何事かと飛び出してくるぞ?」

「う」

「腰の手当ても含めてオレにまかせておけ。ビールの件はその後だ」

ブルージーンズが危ういところまで擦り下げられ、手広く入念にまさぐられる。

庵の指に欲望が素直な反応を見せてしまう前に、なんとか平静を保って

逃げをうちたい体だが、かすかとはいえ痛みは本物であるから無理な力は入れたくない。

まぁ、それ以前に庵が巧みな押さえ込み方をしているせいで無理なんであるが…。

(なんだかんだでいっつも庵の手管にノせられてしまうのは悔しいが…)

そうして結局、京は今回もそれを許してしまうのだった。



   


京のご実家でこっそりラブライフを送ってみる庵さんデシタ。
行数の都合で庵の手の早さがいつにもましております。
え? 腰痛めたハニーにゴムタイなこと仕掛けちゃうのはどうか?
ダイジョーブ!壊れる体じゃないし、壊すようなこともしないからネ!(明)



                   戻 る