「First Chiristmas」





オレは元黒猫のキョウ。

望んでたヒトの姿となれた後も大好きなイオリと仲良く暮らしてる。

只今『チェルシー』って名前のカフェで働きながら人間の社会勉強中。

ここのカフェ・オ・レとサーモン&チキンサンドはとっても美味な上、

お店の雰囲気やオーナー達の人柄も良い。

そんなワケでイオリが呆れて笑うほど入り浸ってたのがある日、

「ギャルソン募集」ってボ−ドの文字を見たのがきっかけで働くことに。

それにこのお店はイオリが活動拠点にしてるあのライブハウスの近くにあるから

なにかと都合がいいのダ。


今日はクリスマスイブ。





「クリスマス限定、当店自慢のオリジナルケーキはいかがですかぁ」

道行く人に声をかける。

店先にだしたテーブルに積まれたケーキの箱は残すところあと3コ。

だけど、そのたった3コになかなか買い手がつかない…。

(う〜ん。お腹へってきたし冷えてきたし、誰か早く買ってくんないかなー。)

ちょっとだけ、としゃがんで足元の小型電気ストーブに手をあてていると頭の上から声が降ってきた。

「ケーキはそれで終わりか?」

(お客さんだ)

よっ、と勢いつけて笑顔で立ち上る。

「はい! もうこの3コでさい…ご、で……あ!」

「頑張ってるな、キョウ」

視界には黒レザーのハーフコートを着たイオリが立っていた。


「イオリ。どうしたの。ひとり?」

「ああ、皆は近い所でいいとスタジオ裏の喫茶店に行ったんだが、オレはキョウと同じで

ここのコーヒーの味が好きだし、それに」

「?」

「おまえもいるからな」

「…………////////」

うにゃにゃっ。


これしきのことで? って思うかもしれないけどさ…。か、顔赤くなっちゃったかな? あっついぞ。

しきりにテレてるキョウの前でイオリが財布を取り出した。


「これ以上おまえが凍えないうちに残りの3コはオレが買っていこう」


「え? 3コも??」

「2コはヒデロー(←バンドのお仲間さんの名前だよ)達への差し入れ」

ふむふむ……ん?

「じゃぁ、もう1コは?」

「クリスマス限定"チェルシー"自慢のオリジナルケーキ』だろう? 今夜の食後のデザートにどうだ?」

「…あっ、そっかー。うんうん! 食べたいっ! 食べよう、イオリ!」

「ああ」

思わず大喜びしてしまったキョウを見て柔らかく笑んだイオリは、それからコーヒーを飲んで

しばしくつろぐと、ケーキの箱が入った赤い紙袋を片手に店を出て行った。

すれ違いざま「ひとあし先に帰って待っているぞ」って囁いて。


ふふふー。早く夜にならないかなー。なんか楽しみになってきた。

イオリといっしょ。

はじめてのクリスマス。




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